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蒼星石「いつか、また来るよ」

1 :VIPがお送りします:09/04/25 11:25 dyAfvLRp0
雛苺「翠星石ー、熱心に何見てるの?」

翠星石「ちょっと静かにするです! ドラマの再放送ですよ」

雛苺「面白いの?」

翠星石「作り物とバカにしてたですがこれで中々、侮れん出来ですぅ チビチビも見るですか?」

雛苺「んーと…とりあえず見てみるの」
4 :VIPがお送りします:09/04/25 11:29 dyAfvLRp0
『あら貴方、眠れないの?』

『あぁ…何だか寝付けなくてな』

『そうね…ならちょっとその辺を散歩してみない?』

『散歩?』

『少し行った辺りに静かでおしゃれなバーがあるんだけど、興味無い?』

『バーか…たまにはそれもいいな』

雛苺「何だか大人な会話してるなのー」

翠星石「ふんふん…成る程」



翠星石「チビチビ、JUMが今どこにいるか知ってるですか?」

雛苺「JUMは確か二階の部屋にいると思うけど、これ最後まで見ないの?」

翠星石「これだけ勉強すればもうじゅーぶんです!」

・・・・・・・・・・・・・・


5 :VIPがお送りします:09/04/25 11:33 dyAfvLRp0
連続通り魔…この辺も随分物騒になったもんだ。
小柄で全身黒ずくめの正体不明の謎の斬り付け魔、か。
当分あいつらを一人で外出させられないな。
まぁ、家にいる分には何にも関係ない話だ。

ばさっと音を立てて新聞を持ち直すと、扉の隙間から覗き込む人形が目に入った。

翠星石「J、JUM、何読んでるですか?」

JUM「ん、新聞だよ新聞 あんまり暇だから何となくな」

翠星石「そ、そうですか その新聞ってのは面白いですか?」

JUM「いや全然」

本の代わりにと読んでみたけど、外に出ない人間が読んでも全く意味の無いことばかり書き連ねてあるだけだ。
これならこいつらと話してる方がよっぽど有意義か。

JUM「そうだ、お茶するついでに少し一緒に話さないか?」

いつものこいつなら絶対に乗ってくれるだろう提案をする。
だが僕の予想に反して、翠星石は言った。

翠星石「それもいいですけど…翠星石はそれよりもJUMと一緒に昼寝したいです」


6 :VIPがお送りします:09/04/25 11:37 OZWSeePxP
紫煙

7 :VIPがお送りします:09/04/25 11:37 dyAfvLRp0
相変わらず冒頭から下手糞ですまん


翠星石「さてと、ここにするです」

翠星石に言われるがまま持ってきた座布団にタオルケットを床に置く。
夏の気配がほんの少し混じる、終わりかけの春の日差しが流れ込むリビング。
真紅も雛苺もどこかへ行っているのか、どこにもいなかった。

そろそろいいだろうと聞いてみた。

JUM「何で急に昼寝なんかしたくなったんだ?」

翠星石「そんなことはどうでもいいです JUMは大人しく翠星石に従って一緒に寝てればいいんですー」

やっぱりはぐらかされる。
毎日毎日夜9時には必ず寝てるこいつには昼寝なんかどう考えてもいらないはずなのに。

でも、昼寝もたまにはいいかもな。
窓の傍に寝転ぶ。

JUM「ほら、お前も入れよ 腕枕ぐらいはしてやる」

9 :VIPがお送りします:09/04/25 11:42 dyAfvLRp0
翠星石「…んしょ、んしょっと」

JUM「おい、わざわざこっちに詰めるなよ」

翠星石「狭いんだからしょーがないんですよ …迷惑だったりするですか?」

JUM「いや…そんなことはないけど」

翠星石「ならもうちょっとそっちに寄らせてもらうですぅ」

JUM「お、おい…だからあんまり…」

…本当は少し迷惑だった。
いつもは気にもならなかった翠星石の匂いを意識してしまう。
何だか…妙に緊張する。
いつも一緒にいるはずなのに、何でだろう。

翠星石「ごちゃごちゃとうるさいですね…って何翠星石の顔なんか見てるですか?」


11 :VIPがお送りします:09/04/25 11:51 dyAfvLRp0
JUM「な、何でもない…もういいからさっさと寝ろ」

言葉が少し冷たくなる。

翠星石「むぅ…」

分かったです…もう寝るです。
翠星石は僕に背中を向けてそう言った。

すぐにごめん、と謝りたかったけど口が動くだけで声が出ない。
相変わらず口下手なのは直らない。

はぁ、と自分に一つ溜め息。
代わりに後ろからそっと髪を撫でる。

翠星石「……」

JUM「あ、あー…その、…ごめん」

言葉がいくつも抜けている謝罪。
普通ならこんな謝り方なんて通じないだろうけど、こいつは違った。

翠星石「…別に最初から気にしてないですよ JUMが恥ずかしがり屋なのはよーく知ってるですよ」

何だか悔しくもあり、恥ずかしくもあるのだけど。
こんな小さな人形なのに、僕のことを少し分かってくれているんだろうな、と思った。

腰に手を回してこっちに引き寄せる。

12 :VIPがお送りします:09/04/25 11:56 dyAfvLRp0
どれぐらい経っただろう。
相変わらず眠れない。
少しだけ開かれた窓からゆっくり入ってくる風がカーテンを優しく揺らす。

こいつはと言えば、随分前からすぅすぅと腕の中で寝息を立てていた。
何の気無しにドレスを、髪を、首筋を、横になりながら見る。

…白い、綺麗な首筋だ。
そっと、首もとの栗色の髪に顔を埋める。
……。
……。


……何だろう。
ただ匂いを嗅いでるだけなのに…何だか変な気持ちになる。

…もっと嗅いでみたい。
もっと深く顔を埋めようとした、その時だ。

真紅「二人で何してるのかしら」

15 :VIPがお送りします:09/04/25 12:07 dyAfvLRp0
JUM「…ただの昼寝だ お前も一緒に寝るか?」

真紅「そうね…でも私は眠れそうにないから遠慮しておくわ」

そう言って、キッチンへ行った。

…とりあえず、こいつが起きる前にもう一度嗅いでみようか。
翠星石の首もとの髪を掻き分ける。
顔を近づけてみると、首と背中の境界、ドレスの襟元から少し、本来そこには無い何かが覗いていた。
しばらく見て、それが何か思い出す。

17 :VIPがお送りします:09/04/25 12:16 dyAfvLRp0
今のうちから言っとく
前まで後付けで色々言ったことをいくつか撤回することになる


背中に斜めに、大きく斬り付けられたこの傷。
こいつが初めて家に来た時、髪を洗ってやった時に見たものだ。

少し、傷を指でなぞる。
見た感じだから正確には分からないけど、この傷、全く治ってる様子が無かった。
ちょっと前に、真紅が転んでつけた傷は一晩もすれば治っていたことがあった。
どういうことなんだろう。人形にも傷が治る個体差があるんだろうか。
あったとしても、全く治らないってのはやっぱりおかしいんじゃないだろうか。

そもそもこの傷って何なんだ?
この傷について本人から聞いた記憶が無い。
……。その内聞いてみるか。

19 :VIPがお送りします:09/04/25 12:27 dyAfvLRp0
雛苺「起きてー!晩御飯なのよー!」

鼓膜にぶつけられた雛苺の声によって強制的に目を覚ます。

JUM「…頼むからもう少し静かに起こしてくれ」

翠星石「くぁぁ…お…怒る気にもなれんですぅ…」

翠星石も今まで寝ていたのか。
時計を見ると、8時過ぎ。
寝すぎた…。

真紅「全く、二人とも寝すぎよ?」

食卓に着いて、まず欠伸。

JUM「…そう思うなら起こしてくれよ」

真紅「何度か起こそうかと思ったけど、JUMの寝顔を見てたらそんな気がすぐ失せてしまってね」

JUM「…見てた?」

真紅「見てたわ、JUMが寝てから起きるまでずっと」

可愛かったわよ。
にっこりと微笑んでそんなことを言われた。


ご飯を口に入れたままうつらうつらしてる翠星石を、姉ちゃんが肩を揺さぶって起こしていた。

22 :VIPがお送りします:09/04/25 12:36 dyAfvLRp0
JUM「寝れない…」

午前2時。
どうやら今日は大人しく眠れそうにないことを十分理解させられた。
100%、昼寝したせいだ。

さて、眠気が来るまであと何時間か、何をしていようか…。

翠星石「おや…JUM、眠れないですか?」

JUM「誰のせいでだと思ってる…お前も眠れないか」

鞄の蓋を開けて、翠星石が寄ってきた。

翠星石「ねぇJUM…?よ、良かったら…ちょっとその辺まで散歩にでも行かねーですか?」

24 :VIPがお送りします:09/04/25 12:44 dyAfvLRp0
JUM「散歩?お前とか?」

翠星石「そうです!この時間だと人間共もいねーはずだから大丈夫です!」

翠星石からの散歩の誘いか…。
暇だといっても正直、面倒くさいな。

翠星石「う…イヤですか…?」

どうやら顔に出てたらしい。

JUM「いや、別に僕は…」

翠星石「えーと、ちょっと行った所に静かで綺麗な公園があるんですけど…それも興味ないですか?」

えーとえーと、と翠星石は逡巡を繰り返している。
窓から差し込む、午前二時の月明かり。
それに横から照らされる翠星石の顔を見ていると、さっきまであった倦怠感が消えていった。

JUM「興味、ちょっとだけあるかな」

翠星石「…え?」

28 :VIPがお送りします:09/04/25 12:54 dyAfvLRp0
翠星石「これにこれにこれに…あとこれも買うです!」

JUM「何で公園でしばらく遊ぶってだけでこんなにお菓子がいるんだよ…」

せめて千円以内に収めてくれ、という僕の頼みに渋々ながらも、それでいてどこか楽しそうに棚に戻していく翠星石。
公園に行く道中、偶然見つけたコンビニに寄って食料を買い集めることになった。
こんな深夜でも、表に溜まってる3人と店内に一人、と客は少しはいた。
だけど真紅が前に使ったレインコートを着せている翠星石を誰も気にはしなかった。

翠星石「さぁ!さっさと公園に行くですよ!」

ビニール袋に目一杯詰め込まれた食料を楽しそうに持ち意気込んでいる翠星石に、前に気をつけろよ、と言う。
僕がドアを開けて、翠星石が飛び出した瞬間。

「あじゃあああああああああああああああああああああ!!!!」

翠星石が蹴り飛ばした、おでんの入った容器が店の前で溜まっていた一人の頭にぶつかった。

33 :VIPがお送りします:09/04/25 13:03 dyAfvLRp0
>>28
容器゛が゛


突然脳天から降り注いだアクシデントに悶えていたそいつの仲間の一人が立ち上がって寄ってきた。
僕の胸倉を掴んで捻り上げる。

「おい中坊…俺のダチに何してくれてるんだよ」

ドアの付近でへたり込んで固まっている翠星石に言う。

JUM「す、翠星石…お前は家に帰れ」

翠星石「…っえ?」

JUM「さっさと家に帰れ…き、気付かずに蹴り飛ばした僕が悪いんだから」

翠星石が顔全体でえ?え?と聞いている。

「そういうこった しばらく俺らこいつと遊ぶから、関係ねーのは引っ込んどけ な?」

36 :VIPがお送りします:09/04/25 13:13 dyAfvLRp0
「じゃあのちょうどいい路地裏にでも行くべ?」

「じゃーねーバイバーイ」

しばらくビニール袋を片手に固まっていた翠星石を残して、僕は路地裏に連れ込まれた。
道路から見えないところまで行くと、地面に叩きつけられる。

「さーてと、とりあえず金?」

「だろ?持ってる分さっさと出してねー」

「〜〜…ってうわー…全然ねーし」

立ち上がらされ一発、まず腹に入れられる。
もう一度倒れ、身体をくの字に曲げて痛みの波が去るのを待つ。
さっき、おでんのシャワーを浴びた男だった。

「百万持ってたとしても許さねーよ中坊が 朝まで大人しくボコられてろ?」

はぁ、とまた溜め息をつく。
今日はのっけからツいてない。


…まぁこんな日もあるか。
翠星石を逃がせただけ、上等だ。

また立ち上がらせられ、そいつが腕を振り上げた時。


翠星石「JUーM!」

40 :VIPがお送りします:09/04/25 13:26 dyAfvLRp0
来ては絶対にいけない奴が来た。
三人をすり抜けて、僕に駆け寄る。

翠星石「JUM…JUM…!!」

息を切らして僕の情けない顔を見ると、既に涙目だった両目から一筋、流れ出した。
肩を震わせて、僕のコートを掴んで嗚咽する。

JUM「…帰れよ」

翠星石「うっ…や、やー…ですっ…うぅ…」

見せたくなかったのに、一番見せたくない奴にこんな情けない所見られてしまったか。
はぁ…。

JUM「いいから帰れよ…僕は大丈夫だから」

誰が聞いても分かる、虚勢だった。

翠星石「そんなこと…ひっく…知らんっ…ですぅ…」

46 :VIPがお送りします:09/04/25 13:40 dyAfvLRp0
座り込んでいた僕の後頭部にガツン、と一撃が叩き込まれる。
視界が一瞬暗転するけど、翠星石の悲鳴で意識をギリギリのところで掴む。
何事か、後頭部を手を伸ばすと、何かぬるっとした液体に触れた。…畜生。

「弱いくせに中坊のくせに…女の前ではいいカッコするってか」

「ダセぇーっつーのバーカ 全然決まってないから」

「ったくよー何でこんなだせー中坊に女がいて俺にはいねーの?マジ神さま死ねよ」

「女っつってもこいつ超ガキじゃん」

「じゃーこいつ超ザコい上にロリコン?」

怒りと、そして恐らく恐怖に震えている翠星石を、這い蹲ったまま、光の見える方に押す。
もうただ押すぐらいしか出来なかった。

JUM「…行けよ」

翠星石「……」

何も言わない。
だがまだコントをしている連中にゆっくりと歩み寄る翠星石を見ると、僕の願いが届かなかったことを理解した。

翠星石「…JUMの代わりに、翠星石を殴ってくれです」

51 :VIPがお送りします:09/04/25 13:50 dyAfvLRp0
…は?

連中にしても斜め上だったのだろう。コントが中断された。

「お前がこんなクズの代わりに殴られるって?」

クズと言った男に翠星石が物凄い形相でガンを飛ばす。
だが流石に喧嘩慣れしてるのだろう、ガンぐらいでは少しも怯まない。

翠星石「そこの人間…お前、女がいないとか何とか言ってたですね」

コントをしていた片方に言う。

「あ、そうだけど何?お前が俺の女にでもなってくれんの?」

翠星石「…今日だけなら、構わないです」

「は?」

翠星石「…翠星石をお前らの好きにしていいと言ってるです」

おいおい、何勝手に話進めてるんだよお前ら。
僕の問題だろ?何で翠星石が出張ってるんだ?

「うーん、でもどうしよっかなー 俺らこいつ殴るのすげー楽しいんだけどなー」

そう言いながら翠星石の顔を、頬を、頭を撫でる。

54 :VIPがお送りします:09/04/25 14:05 dyAfvLRp0
翠星石「…言いたいことがあるならはっきり言えです」

ぷるぷると肩を震わせて、手を握り締めて翠星石は言う。

「あのさーじゃ言うけどさー君ちょっと生意気なんだよねー」

「俺らお願いされてる側じゃん?立場とか分かってる?」

翠星石「……」

「だからさ、お願いして欲しい訳よ、俺らに」

「『お兄さんたちみたいなイケメンに全身ぐっちゃぐちゃにしてもらうのが夢でした♪思う存分私を味わってください♪』って具合?
まあせめて最低でもこれぐらい言ってくれないとなー」

「ヤル気も起きねーってか?」

またあの二人が笑い出す。

翠星石「…お…お兄さんたち…みたいな…」

「うわっこいつガチで言う気だぜ!?」

「マジすげーなこいつ いい子だねーよしよし」


触れるな触れるな触れるな…翠星石にそんな醜い手で触れるな。
怒りが痛みを遠ざける。
一瞬生まれた痛みと痛みの中間、その隙に立ち上がろうと地面に手をつくと、もう一人の男に手を思いっ切り踏みつけられた。

59 :VIPがお送りします:09/04/25 14:18 dyAfvLRp0
足を手の上でギリギリと踏みにじる。
手から漏れ出る血のせいでどこを怪我しているのか全く分からない。

「何中坊のくせに反抗的な態度示してんだ?大人しく朝までボコられてりゃいいんだよお前は」

翠星石「JっJUMには手を出すなです!」

「知らねーよんなこと」

「あんなザコどうでもいいからさ、さっさとどっか公園でもいいから行こうぜ」

翠星石「知らんです!JUMをこれ以上傷つけるつもりなら翠星石はお前らとなんか」

どすっ、と鈍い音がすると同時に、翠星石が崩れ落ちる。

翠星石「うっ…うぁぁ…」

「ぴーぴーうるせーっつの ったく女ってのは何でどいつもこいつもこううるせーかね」

「お前の手が早すぎるんだよ」

「ったく…俺のせいかー? あーもー、ここでいいからとりあえずこいつ引ん剥こうぜ」

JUM「ふっふざけんなぁぁ…手前らぁぁ…!!!」

布を、翠星石のスカートを引き裂く音がする。

「ふざけてんのは手前だよ馬鹿が」

蹴りが僕の胸に叩き込まれる。

65 :VIPがお送りします:09/04/25 14:32 dyAfvLRp0
こつ、こつ、と響く音。
何か聞こえる。
でもこれ以上何が来ようと、もうどうでもいい。
もう全部、遅い。どうしようもない僕と、運命を痛みの隙間から呪った。

「全部全部手前のグズさとザコさが招いたことなんだからよ、恨むんなら俺らじゃなく手前を恨めよ?」

こつ、こつ、こつ。

「さっすがお前は言うことが違うねー 中坊に説教垂れるなんて先公かよ」

こつ、こつ、こつ、こつ。

「それ褒めてん」

どしゅっ。
一瞬、場の空気が止まる。
どしゃっ。


何かが起きた。
だが起こったあまりにそれは現実離れしていた。
僕が望んでいた、連中の、翠星石に群がっていた薄汚い豚の死をこれ以上無く正確に、叶えてくれたからだ。

暗闇の中で何か、かちゃり、と金属同士が擦れ合う音がした。

71 :VIPがお送りします:09/04/25 14:45 dyAfvLRp0
誰一人、動けない。
動いてるのは暗闇の中の誰かだけだ。

最初に、僕を殴っていた男が動いた。

「な、な、な、な、な、」

死体を、いや、汚く血を撒き散らしてる生ゴミを見つめながら男はふらふら、と壁に手を付いた。

ずばっ。
ぼちょっ。

しっかり見ていたから今度は理解できた。
壁に付いた男の左腕の手の付け根から先を分断されたのだ。

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、ああああああああああああああ」

姿勢を崩した男が倒れこみ、飛ばされた自身の左手を見て大層驚いている。
もう一人の男を見てみると、何か悲鳴を上げながら道路へと走り去っていく背中が見えた。
それに気付くと男は左手を置いて逃げていった。






……静寂が戻る。
地面に手を付いて痛みに顔をしかめると、後ろに誰かの気配を感じた。

「……翠星石」

73 :VIPがお送りします:09/04/25 14:58 dyAfvLRp0
翠星石の名を聞いて振り返ると、そこには大きな何かを振り上げて、今まさに振り下ろさんとしている何かがいた。
そして振り下ろされる。

JUM「…翠星石を」

頭の数センチ上で止まる。
構わず続ける。

JUM「翠星石を…あんたは知ってるのか?」

「……」

剣を、いや…鋏のようなものを置いてくれた。
黒いコートを纏ったそいつは、どうやら僕は見逃してくれるらしい。

どうにも、こいつの特徴的な容姿に引っかかったけど、今はそれより翠星石だ。
立ち上がれそうにないから擦り寄る。

JUM「すい…翠星石…おい…翠星石…」

76 :VIPがお送りします:09/04/25 15:08 dyAfvLRp0
翠星石の姿を見て、思わず涙を流す。
何だって僕だけじゃなく、こいつまで傷つかないといけない。
おかしいだろ、そんなの。何で翠星石が、何で何で何で。

引きちぎられたスカートの汚れを払って、コートで包み、抱き込む。
例のあいつは近寄ってこないが、翠星石を一瞥するとどこかへ歩いていく。

JUM「おい…」

「……」

無言で振り向く。

JUM「……」

「……」

JUM「その…お礼を…」

翠星石「JUM…」

腕の中で翠星石が僕の名を呼んだ。

JUM「す、翠星石!?」

79 :VIPがお送りします:09/04/25 15:21 dyAfvLRp0
翠星石「え、えへへ…JUM、無事ですか…?」

JUM「あ、あぁ…!お前のお陰で無事だよ…ありがとうな…」

翠星石「良かった…ですぅ…」

JUM「ああ…僕も翠星石が無事で…本当…良かった…」

でも…。

翠星石「え…?」

JUM「でも…頼むから…」

JUM「頼むから…もう二度と…」

こんな真似はしないでくれ…。


そう言う前に、翠星石に口で口を塞がれた。


鳥たちの鳴き声が頭上からする。
勝手に祝福してくれてるのか、そろそろ夜明けだと教えているのか。
そんな思考がゆっくりと、翠星石によって融かされていった。

82 :VIPがお送りします:09/04/25 15:30 dyAfvLRp0
翠星石「んくっ…変な味です…」

鉄の味しかしないです、と言う。

JUM「そりゃそうだ…口の中切ってる訳だし」

翠星石「そーいうことはする前に言」

言い終える前に咳き込む。
背中をさする。

JUM「…何でこんな時にしたんだ?」

さすりながら聞いてみる。

翠星石「と…取ら…ごほっ」

JUM「あーもー…落ち着いてから聞くから…今は大人しく帰るぞ」

もう一度翠星石をコートで包み、立ち上がる。

「明日」

JUM「うぁっ!」

影から突然ぬっと出てきて言う。

「明日、ここで待ってるよ」



101 :VIPがお送りします:09/04/25 16:15 dyAfvLRp0
家に戻ったのは大体5時ごろだった。
そんな時間にやっぱり誰も起きておらず、僕と翠星石を見て騒がれずに済んだ。
まず翠星石を僕のベッドに寝付かせる。
それからとりあえず傷を洗ってから絆創膏やら包帯やらで適当に処置をした。
医学の知識なんか皆無の僕が出来るのはせいぜいその程度だった。
どこも折れてはなさそうなのが幸いだった。

真紅や雛苺、姉ちゃんに見つかって騒がれるのは鬱陶しいからどこかで寝ていたかったけど、
その場所を考えているときに不幸にも真紅に見つかった。


真紅「まったく…消毒もしないで包帯を巻くなんて無知にも程があるわ」

ぶつくさ言いながらも、ちゃんと処置してくれる真紅。

JUM「悪いな…起きて早々こんな面倒くさいことさせて」

真紅「面倒くさいなんて…!」

ぎゅっと包帯を巻く腕に力が込められる。

JUM「痛い痛い痛い!」

真紅「面倒くさいなんて…」

真紅「私がJUMの怪我を診るのに、面倒くさいなんて思うわけないわ…」

106 :VIPがお送りします:09/04/25 16:28 dyAfvLRp0
真紅「私だって…JUM 貴方のことをとても大切に思ってるわ…」

だって。だってそれは、好きだから。

真紅「何よりも…やっと見つけた大切な人が傷ついているのに、こうやって…」

包帯をしゅるり、と優しく腕に巻く。
ところが巻かれた包帯にぽつぽつ、と染みが次々に生まれる。
顔を上げてみると、真紅の肩が震えている。

真紅「こうやって…包帯を巻いてあげることが…面倒くさいなんて…」

JUM「真紅…」

そっと手を伸ばす。
すると、その腕を真紅が胸の中で抱きしめた。

真紅「可哀相に…とても可哀相だわ…JUM…」

こんなに…傷だらけで…。

109 :VIPがお送りします:09/04/25 16:37 dyAfvLRp0
真紅「いい事、もう今日は絶対にこのベッドから出ては駄目よ」

JUM「わぁーった 僕もそろそろ限界だし」

結局完徹してしまった僕の身体も心もそろそろ折れそうだった。
脳のシャットダウンのアイコンを何度もカーソルが掠めている。

真紅「何かして欲しいことがあったら何でも私に言いなさいね」

JUM「ああ、分かった…」

真紅「それからご飯は私がここまで持ってくるから、安心するといいわ」

JUM「ああ、それも分かった…」

真紅「あ、それからくんくんの時は」



終わりそうにない真紅の話から逃げるように、いつも聞いているあの効果音が頭の中に響いた気がした。



今日の晩にまたあの路地へ。
それだけメモに保存してから。

112 :VIPがお送りします:09/04/25 16:45 dyAfvLRp0
むくりと目を覚まして、時計を見る。
午前1時半過ぎ。
ベッドから降りようとすると、学校の机で寝るような格好で肩を上下させている真紅がいた。

こいつ、もしかして本当にずっとここにいたのか。
思わず、そっと髪を撫でる。普段なら絶対触らせてくれ、なんて言えない綺麗なブロンドヘア。
抱きしめるようにして、顔の横から髪に顔を埋めて匂いを嗅ぐと、何とも言えない香りがした。
こいつの淹れた紅茶のような優しい香りと、もう一つ何かが混ざって出来た不思議な香り。
しばらくそうしてから、僕の代わりにベッドで寝かせる。

…行くか。


ばたん。



翠星石「……」

114 :VIPがお送りします:09/04/25 16:53 dyAfvLRp0
昨日よりも少し時間をかけて、同じ場所に着いた。

昨日と違うのは、あの生ゴミが二つとも消えていることだけだった。
しっかりと地面に残った血痕が、ここに何か足りないものがある、と言っている。


「来たんだね」

振り向くと、またも暗闇の中からぬぅっと出てくるあいつがいた。
こいつだけは昨日と何一つ変わらず、大きな鋏とコートを纏っていた。

JUM「助けてくれた礼を言いたかったから…」

「ふふ、そうかい」

深く被ったフードで顔が見えない。

「まぁここじゃなんだからこっちに来なよ、人間」

言われるがままに小さい廃ビルに入る。

123 :VIPがお送りします:09/04/25 17:16 dyAfvLRp0
ビルの屋上に出る。
貯水タンクに謎のパイプ群、大量の室外機。
どこにでもある、何の目新しいものも無いものの羅列。


しばらくそれらを眺めてから、パイプに腰掛けているそいつに言う。

JUM「お礼と言っては何だけど、これ」

紙袋の中から一つ取り出して、手渡す。

「…なんだい、これは」

どことなく刃がどす黒く汚れた鋏を右手に持ちながら聞く。

JUM「それはどら焼き、世界中で愛されてる魔法の食べ物だ」

「食べ物?」

JUM「喰ったことないのか?こうやって喰うんだよ」

もう一つ紙袋から取り出して、ビニールを破って食べる。
そいつも倣って食べる。

JUM「お茶でもあればいいんだけど、ごめんな」

僕の言葉が聞こえないのか、そいつはしばらくもくもくとどら焼きを味わっていた。

128 :VIPがお送りします:09/04/25 17:26 dyAfvLRp0
しばらくそれを眺めていると、手からぽろり、と食べかけのどら焼きを落とした。

「ん…」

さわさわと地面を撫でて探すが、それに少し違和感を感じた。
落ちたどら焼きは少し前に落ちているだけだ。
それなのに、まるでコンタクトを落としたような探し方。

代わりに拾って、新しいどら焼きを渡す。

JUM「ほら…」

「え、あ、ありがとう」

すっと手を伸ばして受け取る。
そして何度か色々なところを破こうとする。

聞くべきかどうか迷ったが、聞いてみる。

JUM「お前、もしかして目が見えないのか?」

130 :VIPがお送りします:09/04/25 17:41 dyAfvLRp0
唇に触れたところで、どら焼きを膝に置いた。
しばらく僕を見るようにして、言った。
風が排ガスばかり乗せて流れる。

「完全に見えない訳じゃないよ」

「生きてる物や動いてる物は気配を感じて一応少しは『見る』ことが出来る」

「そしてその逆は」

真っ暗。あるのか無いのかも分からない。

JUM「…大変だな」

だからこいつは鋏を身から離さないのか。

「人間に心配される筋合いは無いんだけどね」

またどら焼きを口に運ぶ。

JUM「でも、そんな大切なこと僕なんかに言っていいのか?」

「…どら焼きのお礼かな」

JUM「随分、扱いが軽い秘密なんだな」

「そんなことはないさ これは他に漏れたら間違いなくまずいことだよ」

「でも少なくとも、僕の姉の男にはいいかな、と思ってね」


135 :VIPがお送りします:09/04/25 17:56 dyAfvLRp0
JUM「…やっぱり、お前もあいつらの姉妹なんだな」

もう一つ取り出し、投げて寄越す。

「翠星石はどうだい あの人間嫌いで臆病な姉が随分変わったじゃないか」

JUM「初めて会ったときも凄い荒れてたけど、やっぱり前からなんだな」

ああそうだ、翠星石の話のついでにこいつにあのことを聞いてみるか。
こいつとは何だかちゃんと話が出来そうだ。

JUM「あのさ、もし知ってたらでいいんだけど」

その時、びゅうっと風が唸る声が聞こえた。

「ぶわっ」

どすっ。鈍い音と共にあいつが後ろに倒れた。
しばらく起き上がるのを待っていたけど、立ち上がる様子がない。

141 :VIPがお送りします:09/04/25 18:07 dyAfvLRp0
パイプの裏に回って見てみると、後頭部にもらったコンクリートの一撃で目を回している人形がいた。
顔を覆っていたフードが風で脱げていた。

じっくりと見るまでも無かった。
さらさらと指通りのよさそうな髪、透き通るような白い頬、華奢な腕、蒼を基調にしたドレス。
どこか凛とした美しさがあった。
また思わず匂いを嗅いでしまいたくなる衝動が起こるが、理性で止める。

初対面の人形にしていいものか迷ったけど、とりあえず翠星石と同じようにコートに包んで抱き抱える。
か、軽い…。何だこいつ、ちゃんと中身入ってるのか?

腰を下ろして、後頭部をゆっくりさする。

146 :VIPがお送りします:09/04/25 18:18 dyAfvLRp0
何度も撫でてやるけど起きる気配が微塵もない。
人形の介抱の仕方なんか、中学生すらもドロップアウトした僕が分かる訳もなく、
ただずっと、せめて起きた時寂しくないようにと膝の上で抱いて、目を開けるのを待つだけだった。

けど…昼夜逆転は…やっぱり身体に良くないな…。
まぶたが信じられないくらい重い。
……。

「んっ…」

はっと顔を上げて人形を見てみるけど、どこにも変わった様子は無く、相変わらず膝の上でひたすら無表情に眠っていた。
…どこかさっきより少し、ほんの少しだけ頬がぽっとしている気がしたけど、たぶんこいつのせいだろう。
のっそりと小さな家々の間から昇って来た太陽を見ながらそんなことを思った。

152 :VIPがお送りします:09/04/25 18:33 dyAfvLRp0
じっとりした汗を感じてうっすら目を覚ますと、あの人形はいつの間にか膝の上から消え、どら焼きを貪り食っていた。
例のコートを、そしてフードをこれ以上無く深く被って。

「起きたのかい じゃあそろそろ帰るといいよ 翠星石が心配してることだろうさ」

僕に背中を向けてそれだけ言うと、もう僕に顔を見せることはなかった。

JUM「あぁ…じゃあおやすみ…」

中途半端な睡眠から来る怒涛の倦怠感と一緒に二日連続の朝帰りをしてみると、予想通りの鬱陶しい出迎えにあった。
まず夜中に勝手に抜け出したことに泣きながら怒る真紅。
一日振りに顔を合わせた雛苺の満面の笑みでの攻撃。
そして、何故か翠星石がいない。
真紅に聞いてみると、

真紅「あの子のことは今はどうでもいいの!貴方はまず私に謝りなさい!」

と怒られた。
雛苺に聞いてみると、どうやらまだ寝ているらしい。
こんな時間まで寝てるなんて、よっぽど夜更かししてたんだろうか。

とりあえずすぐ寝ることにした。

158 :VIPがお送りします:09/04/25 18:48 dyAfvLRp0
目を覚ますと、これまた午前1時半過ぎ。
自分の身体が夜型になりつつあることを思い知らされた。

またベッドに昨日と同じ格好で寝ていた真紅をベッドに寝かせると、一階に降りて晩御飯の残りを手早く食べる。
思い出してみれば昨日取った食事はどら焼き数個だけだ。
お陰で血が全く足りてない。
でも、あの人形の端正な顔、髪の一本まで思い出すと、ここでのんびりご飯を食べてる時間がとても惜しかった。

…よし、じゃあそろそろ出るか。



空を見上げて、思う。
この真っ黒でいて、コーヒーのように濁っていない澄んだ黒色の空が好きだ。
視力をほぼ失ったというあいつの眼はどれほど綺麗なんだろう。
何者もまともに写すことの出来ないということは逆に何者もあいつの網膜を、角膜を、水晶を汚すことが出来ないということだ。
この空のように、あいつの両目は今でも真っ黒な瞳をその奥に大切に収めているんだろうか。

…行くか。

165 :VIPがお送りします:09/04/25 19:00 dyAfvLRp0
昨日と同じく廃ビルの屋上に行くと、一人コートを風にはためかせている人形がいた。

「…なんで来たんだい」

顔を見せないように、少し斜めに僕を見た。

JUM「…嫌だったか?もしかして」

無言で返す。

「…君は翠星石のマスターなんだろう?考えるまでも無く来てはいけないんだよ」

こつ、こつ、とゆっくりと歩み寄ってくる。
鋏を右手に。

JUM「お前の顔を…髪を、ドレスを、思い出したら…いつの間にか来ることが楽しみだったんだよ」

「はは、僕の顔か…こんなに醜い…僕の顔なんか思い出して…?嘘はいけないなぁ」

嘘はいけないなぁ、いけないいけない。
歩きながら何度もそう反芻して、鋏を鳴らす。

175 :VIPがお送りします:09/04/25 19:14 dyAfvLRp0
JUM「どうした…?さっきから何か変だぞお前」

「変…? いつもの僕を知らない会ってニ、三日の人間が知った風な口を利くね」

入り口を出たすぐのところで固まって動けない僕に、ゆっくり、ゆっくりと人形は近寄る。

「いつだってそうさ、人間は嘘ばかりつく 君も僕に聞こえのいい嘘を並べてあいつとあいつとあいつとあいつと」

「あいつと同じように…両目だけじゃあ飽き足らず…また僕のことを…」

ちゃき。
鋏を構え、重心が前に傾く。

一瞬で胸元に飛び込んできた切っ先を手で払いとばす。
払った手からどばっと大量の血が吹き出る。
それに構わず、勢いの止まった人形を抱きしめる。

190 :VIPがお送りします:09/04/25 19:28 dyAfvLRp0
どくどくと漏れでる血の量に眼を瞑りながら、地面に二人倒れたまま、上から抱きしめる。

JUM「ま、まず…話を聞け…」

顔を離して、衝撃で大きく見開かれた人形の両目を見て驚く。

JUM「はは…やっぱり…想像と違ってるけど…綺麗じゃないか」

「…嘘だよ」

JUM「嘘じゃない…本当に綺麗だ」

「嘘はいいよもう、とにかく早くどいて」

JUM「嘘じゃない…」

「嘘だよ 僕は君が思ってるような人形じゃないよ ほら早くど」



翠星石「…JUMから離れろです、蒼星石」

200 :VIPがお送りします:09/04/25 19:46 dyAfvLRp0
JUM「翠星石…?」

穴でも開いたのか肉が削げ落ちたのか、何にしても今まで見たことの無い出血量のせいだろう。
翠星石を見ても、ぼんやりにしか見えなかった。

「……」

翠星石「JUM…、酷い怪我してるです ほら、今日はもうさっさと帰るですよ」

JUM「いや…翠星石、ちょっとだけ…待っ」

僕の腕を引いてドアまで行く足を止め、背中で言う。

翠星石「…何でですか?」

翠星石「JUMは今こいつに殺されかけてるですよ?もうここにいる理由は一つもないはずです」

ぼんやりとした視界の中、翠星石が今、一体どんな顔をしているのか良く見えない。

「……」

JUM「殺され…かけてなんかないさ…」

翠星石「じゃあ何だって言うですか?」

JUM「分からないけどさ…でも…」

JUM「とりあえず僕は…こんなに綺麗な人形に殺したいほど憎まれるような…嘘つきじゃないからな」

「……」

208 :VIPがお送りします:09/04/25 20:04 dyAfvLRp0
「…嫌なんだよ、もう」

胸の中がどんどん、スカスカの空洞のようにすっきりしてくる。
目だけは擦りガラス越しに見てるようなのに、意識だけは、人形の声を聞き漏らすまいと
どんどんはっきりしていく。
痛みは遠くへ、意識はずっと近くへ。
まるで波のようだ。

「もう嫌なんだ、誰かを好きになるなんて」

「最初のマスターので十分なんだよ あんな気持ちにさせられるのは」

翠星石「……」

「君だって、もう僕の鋏なんか受けたくないはずだろ」

話が良く見えない。
おまけに耳がだんだん遠くなってくるのを感じる。

翠星石「…あいつは確かにおかしかったです」

翠星石「でも、あいつとJUMを同列に考えることは翠星石が許さんです」

地面に倒れている僕のそばにしゃがむ。
そして髪を耳にかけて。

JUM「また…鉄の味しかしないかもしれないぞ」

翠星石「ふふ、もう慣れたですよ」

214 :VIPがお送りします:09/04/25 20:23 dyAfvLRp0
「……」

翠星石「JUMは…お前の思ってるようなどーしよもねーやつじゃないですよ…」

「でも…もうあんな思いは…」

翠星石「全く…あの翠星石がこーんなに言ってやってるのに…」

何だか嬉しいような恥ずかしいようなことを言ってくれてるけど、何か言ってやれる程力が出ない。


緩やかに流れる風を見つめながらあいつらの話をぼんやりと聞いていると、ふと、寝たいと思った。
自分でも分かるぐらいに切実すぎる、この願いは僕の脳と理性の関門をあっさりとパスし、唐突にそれは襲ってきた。
元より、聞いている限り僕が参加してなくても問題なさそうだった。

217 :VIPがお送りします:09/04/25 20:33 dyAfvLRp0
真上から目蓋に直撃していた日光の仕業か、ピンボケどころじゃない視界の荒れように目を痛めながら上半身を起こすと、
周りに誰もいなかった。
鈍い痛みを感じて左手を見ると、包帯でぐるぐる巻きにされて団子のようになっていた。
しばらくそれを見つめていると、背後から小さな声がした。

「…JUMくん」

JUM「っ!?」

驚き振り向こうとする僕の顔を後ろから両手で止められる。

「こっちを見ないで」

JUM「…え?」

「話だけ、聞いて欲しいんだ この街をすぐに出るから」



228 :VIPがお送りします:09/04/25 20:49 dyAfvLRp0
JUM「どっか…行くのか」

「…ごめんね 今の僕じゃ、色々駄目だからね」

「でも、ほんの少しでも僕が自分で綺麗になったと思ったら、またこの街に来るよ」

「それまで、これ預かっていてね」

JUM「え?」

振り向くと、そこにはもう誰もいない。
あったのは、いや、いたのは、あいつの腕だけだった。


肩の部分からドレスごと着いていたそれを、抱きしめると、何だか、また何か匂いがした気がした。
嗅いだことがあるようでないような、そんな匂い。


いつかまたこの匂いの主に会える日を、せいぜい嘘ぐらいはつかないようにして待とう。




232 :VIPがお送りします:09/04/25 20:50 dyAfvLRp0
終わり

236 :VIPがお送りします:09/04/25 20:53 +ix1tVXO0
え?

237 :VIPがお送りします:09/04/25 20:54 g/RukY1RO
帽子とか鋏のがよかったな

238 :VIPがお送りします:09/04/25 20:56 zoy8QY+M0
なん・・・だと
一応乙

239 :VIPがお送りします:09/04/25 20:58 bKyt9Bza0
oioi

240 :VIPがお送りします:09/04/25 20:58 dyAfvLRp0
うへへ、死にそう
書きたいことと書くべきことがまだあったのに俺には全部書けません  畜生文才の野郎


補足が多いから変なとこあったら言って

腕一歩だけ置いていったのはJUMが寝てる間に前のDQN共と一悶着した結果です
大して気にしなくていいと思うけど

241 :VIPがお送りします:09/04/25 20:59 VXTwmDUj0


242 :VIPがお送りします:09/04/25 21:00 47f7b1IVP
仲間を殺されて伊達にされたのに復讐にくるDQNとか下手なシグルイの侍より度胸があるな

243 :VIPがお送りします:09/04/25 21:01 twQjMZxU0


ちょっとDQNぶっ殺してくる

244 :VIPがお送りします:09/04/25 21:01 VXTwmDUj0
わしはこの町のDQN達に『黄金の精神』を見たよ・・・

245 :VIPがお送りします:09/04/25 21:03 zoy8QY+M0
切りつけ魔=蒼でおkなの?

246 :VIPがお送りします:09/04/25 21:03 47f7b1IVP
ていうか終わりか乙

247 :VIPがお送りします:09/04/25 21:11 dyAfvLRp0
前のマスター最初は蒼星石が好き

途中から翠星石も契約

翠星石のことだけ好きになって、蒼星石がなんかうざくなってくる

視力を失わせる薬をこっそり投与

蒼星石嫉妬に駆られて翠星石を両断

以後翠星石を越える人間嫌いに

翠星石レイプ 最初は放置しとくつもりだったけど翠星石を守ろうとするJUMに興味がわく

DQN殺す JUMとアポイントメントとる

最初はJUMをころころして翠星石をやるつもりだったけど、
何か気が変わる

内面の汚さを十分自覚してる蒼星石はJUMの言葉を信じない

最初の目的を達成しようとする

本当に荒いあらすじ
>>245
おk 
>>242
シグルイ知らない



248 :VIPがお送りします:09/04/25 21:15 gcqg/o7P0
…薔薇には平和がよく似合う

249 :VIPがお送りします:09/04/25 21:15 VXTwmDUj0
薔薇には男がよく似合う

250 :VIPがお送りします:09/04/25 21:19 dyAfvLRp0
もう当分模試やらなんやらで死ぬ
二週間後はねぎまと被るから次は三週間後かな
一週間とかやっぱ無理

せめて三週間後までにはやっと届いたトロイメント見まくってもうちょっと上手くなりたいです 

じゃ

251 :VIPがお送りします:09/04/25 21:23 2TdfG7OO0
乙なのだわ

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